
マウスピース矯正は、透明な装置を使用することで目立ちにくく、前歯の軽度な不正咬合を改善できる人気の矯正方法です。しかし、前歯だけの部分矯正には適応症例や限界があり、全体矯正とは異なるメリットとデメリットがあります。
この記事では、マウスピース矯正で前歯だけを治療する場合の特徴や注意点、適応症例、そして全体矯正との違いについて詳しく解説します。
マウスピース矯正で前歯だけ治療できる?

マウスピース矯正は、従来のワイヤー矯正とは違い、透明なプラスチック製であるため、目立ちにくいのが特徴です。
マウスピース矯正で前歯だけを治療できるのかどうか解説します。
軽度の歯並びの乱れの改善は可能
マウスピースの部分矯正は、前歯の軽い歯並びの乱れを治すのに適しています。例えば、少し出ている前歯や、少しガタついている歯、歯と歯の間に隙間がある場合などに効果があります。
前歯だけを治す場合、全ての歯を治すよりも短い期間で終わることが多く、2ヶ月から1年半程で治療が終わる場合が多いです。
マウスピースは透明なので、つけていてもほとんど目立ちません。また、食事や歯磨きのときに外せるので、口腔内を清潔に保ちやすいメリットもあります。
全体的な噛み合わせや歯列バランスの調整は難しい
奥歯の噛み合わせに問題がある、受け口や出っ歯がひどい、顎の形に問題がある、歯を抜く必要がある場合などは、前歯だけのマウスピース矯正では対応できません。
また、前歯だけを動かすと、他の歯とのバランスが崩れてしまう可能性もあります。
そのため、治療を始める前に、歯科医とよく相談して、ご自身の歯の状態に合っているかどうかを確認することが大切です。
マウスピース矯正の部分矯正と全体矯正の違い

マウスピース矯正の部分矯正と全体矯正という、2つの方法の違いを理解することで、ご自身に合った治療法を選ぶ手助けになります。
ここでは、それぞれの違いについて解説します。
治療範囲
部分矯正は、主に見た目の改善を目的としているため、噛み合わせへの影響は限定的です。
項目 | 部分矯正 | 全体矯正 |
---|---|---|
対象範囲 | 前歯や数本の歯 | 口腔内全体の歯 |
適応症例 | 軽度の不正咬合 | 中度〜重度の不正咬合 |
部分矯正は、主に見た目が気になる前歯や数本の歯を中心に治療を行い、前歯のわずかなガタつきや隙間、軽い出っ歯などを改善したい場合に適しています。
一方、全体矯正は文字通り、口の中のすべての歯を対象に治療を行います。歯並びの改善だけでなく、噛み合わせの問題も含めて全体的な改善が可能です。
費用と治療期間
部分矯正と全体矯正では、費用と治療期間に違いがあります。以下の表で比較してみましょう。
項目 | 部分矯正 | 全体矯正 |
---|---|---|
費用 | 30万~80万円程度 | 50万円~150万円程度 |
治療期間 | 半年~1年 | 1年半~3年 |
部分矯正は、治療範囲が限られているため、全体矯正に比べて費用が抑えられます。
また、治療期間も比較的短く、半年から1年程度で終わるケースが多いです。そのため、短期間で見た目の改善を希望する方に適しています。
全体矯正は、すべての歯を動かすため、費用も高くなり、治療期間も1年半から3年程度とより長くなります。ただし、より複雑な歯列の問題や噛み合わせの改善が可能です。
注意すべき点として、個人の歯の状態によって費用や期間は大きく変わる可能性があります。そのため、正確な費用と期間を知るためには、歯科医院での詳細な診断が必要です。
保険適用外の自費診療となるため、医院によって料金設定が異なります。
噛み合わせへの影響
部分矯正と全体矯正では、噛み合わせへの影響が異なります。以下の表で比較してみましょう。
項目 | 部分矯正 | 全体矯正 |
---|---|---|
主な目的 | 見た目の改善 | 歯並びとかみ合わせの改善 |
噛み合わせへの影響 | 限定的 | 全体的 |
顎関節への配慮 | 少ない | 十分な配慮あり |
部分矯正は、主に見た目の改善を目的としているため、噛み合わせへの影響は限定的です。前歯の位置を整えることで、笑顔の美しさを向上させられます。
しかし、前歯だけを動かすことで、奥歯との噛み合わせのバランスが崩れる可能性もあるため注意が必要です。
一方、全体矯正では、歯並びの改善と同時に噛み合わせの問題も解決できます。顎の位置や噛み合わせの改善が必要な場合は、全体矯正がより適しているでしょう。
全体矯正では、上下の歯の関係性を考慮しながら治療を進めるため、より機能的な噛み合わせの実現が可能です。
また、顎関節症などの問題がある場合、配慮した治療計画を立てられます。噛み合わせの改善は、単に見た目だけでなく、咀嚼機能の向上や顎関節への負担軽減も期待できます。
マウスピース矯正で前歯だけ治療できる症例一覧

マウスピース矯正で前歯だけの治療が可能な症例は、主に軽度から中等度の不正咬合に限られます。具体的には以下のような状態が該当します。
- 軽度の出っ歯
- 前歯の軽度な叢生(そうせい)(歯並びのガタつき)
- すきっ歯(前歯の隙間)
- 前歯のわずかなねじれ
これらの症例では、マウスピースによる部分矯正で効果的に改善できることが多いです。ただし、個々の状態によって適応は異なるため、専門医による診断が不可欠です。
マウスピース矯正で前歯だけ治療できない症例一覧

マウスピース矯正で前歯だけの治療が難しい症例には、以下のようなケースがあります。
- 重度の不正咬合
- 奥歯の噛み合わせに問題がある場合
- 抜歯が必要な症例
- 受け口や出っ歯が重度の場合
以上のケースでは、全体的な矯正治療や他の治療法が必要となる場合があります。前歯だけを動かすことで、結果的に全体の歯列バランスが崩れてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
マウスピース矯正で前歯だけ治療するメリット

マウスピース矯正で前歯だけを治療することには、いくつかの大きなメリットがあります。ここでは、主なメリットを詳しく見ていきましょう。
治療が短期間で終わる
マウスピース矯正で前歯だけを治療する場合、全体矯正と比べて治療期間が大幅に短縮されます。通常、半年から1年半程度で目に見える改善が得られるケースが多いです。
治療が短期間で終わる理由は、治療対象が限定されていて、複雑な歯の移動が必要ないためです。短期間で効果が現れるため、忙しい社会人や学生にとっても取り組みやすい矯正方法といえるでしょう。
費用を抑えられる
前歯だけのマウスピース矯正は、全体矯正と比較して費用を抑えられます。治療範囲が限定されていて、必要なマウスピースの枚数が少なくなることにより、結果的に費用が抑えられるためです。
一般的に、前歯のマウスピース矯正にかかる費用は10万円から50万円程度と言われていますが、具体的な金額は歯科医院や治療内容によって異なります。
矯正装置が透明で目立ちにくい
マウスピース矯正の大きな特徴は、使用する矯正装置が透明なプラスチック製のため、目立ちやすい前歯の矯正でも、ほとんど気づかれません。
特に社会人や学生など、人前に出る機会が多い方や、見た目を気にする方にとって大きなメリットとなるでしょう。
従来のワイヤー矯正では、金属製のブラケットやワイヤーが目立ってしまい、笑顔を見せるのをためらう方も少なくありませんでした。
しかし、マウスピース矯正なら、そのような心配はほとんどなく、矯正中でも自信を持って笑顔でいられるでしょう。
取り外し可能で食事・歯磨きがしやすい
マウスピース矯正の装置は取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に一時的に外せます。
これにより、食事の際の制限が少なく、また歯磨きも通常通り行えるため、口腔衛生を維持しやすいというメリットがあります。
ワイヤー矯正では難しかった細部の清掃も、マウスピースを外せば簡単に行えるため、矯正治療中でも虫歯や歯周病のリスクを抑えることが可能です。
マウスピース矯正で前歯だけ治療するデメリット

マウスピース矯正で前歯だけを治療することは、多くの人にとって魅力的な選択肢に見えますが、いくつかのデメリットがあります。
ここでは、マウスピース矯正で前歯だけを治療するデメリットを解説します。
前歯だけの矯正では理想の仕上がりにならない可能性がある
前歯のみの矯正治療には、全体的な歯列のバランスを考慮できないという重要な制限があります。
歯列は全体として機能するシステムであり、前歯だけを動かすと、他の歯との調和が崩れる可能性があります。
考えられる課題は以下の通りです。
- 奥歯との不調和
- 顔のバランスへの影響
歯を整えても奥歯との関係が適切でない場合、見た目は改善されても機能面で問題が残る場合があります。
また、顔全体のバランスや口元の形状にも影響を及ぼす可能性があるため、期待していた美的効果が得られないケースも考えられます。
噛み合わせの改善はできない
前歯だけのマウスピース矯正では、全体的な噛み合わせの問題を解決することはできません。噛み合わせは前歯だけでなく、奥歯を含む歯列全体のバランスによって決まります。
そのため、前歯の位置を変えても、奥歯の噛み合わせが悪い場合は、咀嚼機能や顎関節の問題が改善されない、あるいは悪化する可能性があります。
また、不適切な噛み合わせは、将来的に歯の摩耗や顎関節症などの問題を引き起こす可能性があるため、長期的な口腔健康の観点からも注意が必要です。
歯を削る処置が必要になる場合がある
マウスピース矯正で前歯だけを治療する際、歯を動かすためのスペース確保、IPRまたはディスキングと呼ばれる歯を削る処置を行うことがあります。
この処置には、知覚過敏などの問題が生じる可能性や、歯の形状が変わり、見た目への影響があるリスクがあります。
したがって、IPRまたはディスキングを受ける際は、必要性と潜在的なリスクについて歯科医師と十分に相談することが重要です。
前歯だけのマウスピース矯正でカウンセリング時に確認すべきこと

前歯だけのマウスピース矯正を検討する際、カウンセリングで確認すべき重要な点があります。ここでは、特に注意を払うべき項目について解説します。
自分の症例が部分矯正に適用可能か
カウンセリング時には、まず自分の歯並びの状態が部分矯正に適しているかを確認することが重要です。
軽度の不正咬合、例えば前歯の軽い叢生(歯のガタつき)や軽度の出っ歯、すきっ歯などが部分矯正の対象となります。
ただし、奥歯の噛み合わせに問題がある場合や、顎の骨格に問題がある場合は、部分矯正では十分な効果が得られません。
歯科医師による詳細な診断を受け、自分の症例が部分矯正に適しているかどうかを確認しましょう。
治療計画や仕上がりイメージ
具体的な治療計画と最終的な仕上がりのイメージを詳しく聞くことが大切です。インビザライン矯正の場合、3Dシミュレーションを用いて治療後の歯並びを視覚的に確認できる場合があります。
治療期間、必要なマウスピースの枚数、装着時間などの具体的な治療計画も確認しましょう。
また、部分矯正では全体的な噛み合わせの改善が難しい場合があるため、治療の限界についても理解しておくことが重要です。
費用と支払い方法
最後に、費用と支払方法について詳細を確認します。部分矯正は全体矯正と比べて費用が抑えられる傾向にありますが、具体的な金額は症例によって異なります。
治療費用の内訳、分割払いの可能性、保険適用の有無などを確認しましょう。
また、追加料金が発生する可能性がある場合(例:再治療や保定装置の費用)についても事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
マウスピース矯正で前歯だけの治療は、軽度の歯列不正に適しており、短期間で目立たずに改善できるメリットがあります。
しかし、噛み合わせの改善ができないなどのデメリットもあります。治療の適応や計画、費用などをカウンセリングで詳しく確認しましょう。
Shiro矯正歯科では、インビザライン・ライトによる部分矯正を取り扱っており、前歯の軽度な歯列不正に対して治療を提供しています。
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