
インビザラインは、目立たない矯正方法として人気ですが、治療中の痛みについて疑問に思う方も多いでしょう。実際、治療中に痛みを感じることはありますが、その多くは一時的なもので、適切な対処法を知っていれば快適に乗り越えることが可能です。
この記事では、インビザライン治療で痛みが生じる理由やそのピーク、さらに具体的な対策について詳しく解説します。インビザライン治療を検討している方、痛みの少ない矯正治療をお探しの方は、ぜひ参考になさってください。
インビザラインはどれくらい痛い?

インビザラインは、従来のワイヤー矯正と比較して痛みが少ないとされる矯正方法です。しかし、全く痛みがないわけではありません。
ここでは、歯が動く仕組み、ワイヤー矯正と比べてどちらが痛いかについて解説します。
インビザラインで痛みが起こる理由と歯が動く仕組み
インビザラインで痛みが起こる主な理由は、マウスピースが歯に加える圧力です。この圧力により歯が少しずつ動き、それに伴って歯根膜(歯の根と骨をつなぐ組織)や周囲の骨組織に変化が生じます。
歯の移動の仕組みは以下の通りです。
- マウスピースによる圧力:1枚のマウスピースで約0.25mmほど歯が移動
- 歯根膜の反応:歯根と骨の間にある歯根膜が圧力に反応して伸縮
- 骨のリモデリング(骨の吸収と再生):圧力がかかった側の骨が吸収され、反対側で新しい骨が形成
- 歯の移動:骨のリモデリングにより、歯が徐々に新しい位置へ移動
インビザラインの特徴として、1回のマウスピース交換で動く幅が歯根膜の厚みとほぼ同程度(約0.25mm)であるため、急激な痛みが少ないです。
ワイヤー矯正とどっちが痛い?
一般的に、インビザラインはワイヤー矯正よりも痛みが少ないといわれています。
ワイヤー矯正では、ブラケットとワイヤーを使用して歯を動かすため、より強い力が歯にかかります。特に調整後の数日間は強い痛みを伴う場合が多く、痛みの強さや持続期間もインビザラインより長くなる傾向が高いです。また、ワイヤーや装置が口内を傷つけることで生じる痛みもあります。
一方、インビザラインは薄くて滑らかなマウスピースを使用するため、口内への刺激が少なく、装置自体による不快感も軽減されます。さらに、インビザラインは取り外しが可能なため、痛みが強い時に一時的に外すことも可能です。
インビザラインが痛いと感じる8つの原因

インビザラインで患者さんが感じる痛みにはさまざまな原因があり、それぞれ異なる特徴を持っています。ここでは、インビザライン治療中に痛みを感じる8つの主な原因について詳しく解説します。
歯の移動による圧力
インビザライン治療の本質は、歯を少しずつ動かすことにあります。マウスピースが歯に圧力をかけることで、歯根膜や周囲の骨組織に変化が生じ、それに伴って痛みを感じる場合があります。
歯が動いている証拠であり、通常は数日で軽減するでしょう。通常、この種の痛みは軽度から中程度で、歯の移動に伴う自然な反応として捉えられます。
新しいマウスピースへの交換直後
インビザライン治療では、通常1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換します。交換直後は、多くの患者さんが痛みを感じやすいタイミングです。
新しいマウスピースは前のものとわずかに異なる形状をしており、歯をさらに理想の位置へ動かすように設計されています。そのため、装着直後は歯に強い圧力がかかり、特に初日から数日間は圧迫感や痛みが顕著になります。
痛みは、歯が移動している証拠であり、一般的には2〜3日でピークを迎え、その後徐々に和らいでいくことが多いです。また、新しいマウスピースによる痛みの強さは個人差がありますが、多くの場合、軽度から中程度です。
痛みの原因は、歯根膜や周囲の骨が圧力に反応してリモデリングを行う過程にあります。
マウスピースを外すときの痛み
インビザライン治療中、マウスピースを外す際に痛みを感じる場合があります。
痛みの主な原因は、装着中に歯に加わっていた圧力が、外す際に突然解放されることです。この圧力の変化が歯根膜や周囲の骨組織に刺激を与え、一時的な痛みとして感じられます。
また、マウスピースの着脱時には、歯に直接的な物理的な力がかかるため、歯が敏感な状態ではその刺激が痛みとして現れることがあります。特定の歯だけが痛む場合、その歯が特に動いている可能性が高いです。
痛みは一時的なものであり、時間とともに歯や口腔内がマウスピースの着脱に慣れると軽減していくでしょう。
アタッチメントの影響
インビザライン治療では、歯の表面に小さな突起物であるアタッチメントを取り付けることが一般的です。
アタッチメントは、マウスピースの適合性を高め、歯を動かすために重要な役割を果たします。しかし、アタッチメントが原因で痛みや不快感を感じることもあります。特にアタッチメント装着直後は、口腔内の軟組織(頬の内側や舌)が突起物に擦れることで刺激を受け、痛みや違和感が生じやすくなります。
また、マウスピースの着脱時には、アタッチメントが引っかかったり摩擦が生じたりするため、歯や周囲の組織に負担がかかり、一時的な痛みを感じることがあります。
痛みや違和感は一時的なものであり、時間とともに口腔内の組織がアタッチメントに慣れていくと軽減していくでしょう。
口内の傷
インビザライン治療中、マウスピースやアタッチメントが原因で口腔内の頬の内側、舌、歯肉などを傷つけることがあります。
特に治療開始直後や新しいマウスピースに交換した直後は、これらの装置が口内に馴染んでいないため、擦れや刺激が起こりやすいです。傷は口内炎の原因となり、痛みや不快感を引き起こす場合があります。
また、既に存在する口内炎がマウスピースやアタッチメントによってさらに刺激され、痛みが悪化する場合もあります。
症状は一時的なものが多いですが、適切な対処をしないと痛みが長引く可能性があるため注意が必要です。
抜歯後の痛み
インビザライン治療の一環として、歯並びを整えるために抜歯が必要になる場合があります。抜歯後は、歯肉や骨が治癒する過程で痛みや違和感を伴うことが一般的です。痛みは、抜歯部位の自然な治癒反応であり、通常は数日から1週間程度で徐々に軽減するでしょう。
しかし、インビザライン治療を継続すると、マウスピースが抜歯部位に追加の圧力をかける場合があります。圧力は、隙間を埋めるために歯を移動させる際に発生し、抜歯部位の周囲に痛みや不快感を引き起こすことがあります。
ただし、異常に強い痛みや腫れ、長期間続く不快感がある場合は、ドライソケット(抜歯後の合併症)などの可能性も考えられるため、歯科医師への相談が必要です。
IPR(歯間削合)処置後
IPR(Interproximal Reduction)は、歯と歯の間のエナメル質を少量削り、歯を動かすためのスペースを作る処置です。歯の移動を効率的に行うために必要な工程であり、インビザライン治療ではよく行われる処置です。
IPR自体は痛みを伴うことはほとんどありませんが、処置後に一時的な知覚過敏や不快感を覚える場合があります。冷たいものや熱いものを摂取した際に刺激を感じたり、処置直後は歯と歯の間に違和感を覚えたりします。症状は通常一時的なものであり、数日から数週間で改善することがほとんどです。
もし知覚過敏が長引いたり、不快感が強い場合は、担当医師に相談しましょう。必要に応じて追加のケアや治療が行われます。
顎間ゴム(ゴムかけ)の使用
一部のインビザライン治療では、歯の移動や噛み合わせの調整を補助するために顎間ゴム(ゴムかけ)を使用します。
顎間ゴムは上下の歯をつなぎ、ゴムの張力によって歯や顎に追加の力を加える仕組みです。歯を適切な位置に動かしたり、上下の噛み合わせを整えるために重要な役割を果たします。
しかし、特に顎間ゴムを装着し始めた直後は、歯や顎関節に新しい力が加わるため、痛みや不快感が生じる場合があります。
痛みは通常、数日で軽減し、多くの場合は慣れますが、ゴムの使用を継続する間も、軽度の痛みや圧迫感を感じることがあるでしょう。
インビザラインで痛いと感じる期間やピーク

インビザライン治療中に痛みを感じる期間は比較的短く、痛みのピークは新しいマウスピースを装着した直後に訪れることが一般的です。
歯が新しい力に適応しようとするため、圧迫感や軽い鈍痛を伴います。特に初めて治療を開始した際や治療初期段階では、歯や周囲の組織が敏感になっているため、違和感を強く感じる場合もあります。痛みは装着後1~3日間がピークで、その後徐々に和らぐことが多いです。
マウスピースの交換は1~2週間ごとに行われるため、交換直後に同様の痛みを感じる可能性がありますが、治療が進むにつれて慣れてくる人がほとんどです。
個人差はあるものの、多くの場合、痛みは軽度から中程度で、日常生活に支障をきたすほどではありません。
インビザラインで痛いと感じる時の対処法

インビザライン治療中に痛みを感じることはありますが、適切な対処法を実践することで、痛みや不快感を軽減し、快適に治療を進められます。
ここでは、痛みを和らげるための具体的な方法をご紹介します。
鎮痛剤の服用
インビザライン治療中に痛みが強い場合、市販の鎮痛剤を服用すると症状を和らげられます。
特に新しいマウスピースに交換した直後や治療初期段階で、歯や歯茎にかかる圧力によって痛みを感じる場合に鎮痛剤は即効性のある対処法として有効です。
一般的な市販の鎮痛剤が使用可能ですが、服用前には必ず使用方法や注意事項を確認し、必要に応じて歯科医師や薬剤師に相談しながら、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
また、鎮痛剤は一時的な対処法であるため、長期間使用することは避け、必要最低限の量で対応するよう心掛けましょう。
冷却療法
インビザライン治療中に痛みを感じた際、冷却療法は手軽で効果的な対処法の一つです。冷たい飲み物を口に含むことで歯や歯茎を一時的に冷やし、痛みや圧迫感を緩和することができます。
また、冷たいタオルやアイスパックを頬の外側に当てることで、炎症や腫れを軽減する効果も期待できます。特に新しいマウスピースを装着した直後の不快感に有効です。
ただし、冷却療法を行う際にはいくつか注意が必要です。直接氷を歯や皮膚に当てると、凍傷や過度な刺激を引き起こす可能性があるため避けましょう。
また、長時間冷やし続けることも逆効果となる場合があります。適度な時間で冷却を行い、不快感が和らいだら一旦中断するよう心掛けてください。
柔らかい食事への切り替え
痛みがあるときは、硬い食べ物や噛む力が必要な食品は歯に負担をかけ、痛みを悪化させる可能性があるため、柔らかい食事に切り替えることがおすすめです。スープ、ヨーグルト、豆腐などの柔らかい食品は歯への負担を軽減し、痛みを悪化させるリスクを抑えます。
特に新しいマウスピースを装着した直後の数日間は、歯が移動している最中で敏感になっているため、柔らかい食事を選ぶことで痛みを和らげる効果が期待できます。冷たいスープやヨーグルトなどは冷却効果もあり、炎症や圧迫感の軽減にも役立つでしょう。
マウスピース取り外し用のフックを使う
マウスピースの着脱時に痛みを感じる場合は、専用の取り外し用フック(リムーバーツール)を使用すると便利です。
取り外し用のフックは力加減を調整しやすく、歯や歯茎への負担を最小限に抑えながら安全にマウスピースを外せます。無理に手で外そうとすると余計な力が加わり、不快感や痛みの原因になるため注意しましょう。
歯科用ワックスの使用
アタッチメントやマウスピースの縁が口内に当たって傷つける場合には、歯科用ワックスを使用すると摩擦を軽減できます。
歯科用ワックスは柔らかい素材でできており、アタッチメントやマウスピースの気になる部分に簡単に装着でき、即効性があるのが特徴です。また、ワックスは透明で目立ちにくいため、日常生活でも気軽に使用できます。
使用する際には、装着部分を清潔に保つことが大切です。ワックスを貼る前にマウスピースやアタッチメントをしっかり洗浄し、口内の衛生環境を整えましょう。
歯科医師への相談
インビザライン治療中に痛みが長引く場合や強すぎると感じる場合は、迷わず担当の歯科医師に相談してください。
痛みの原因がマウスピースやアタッチメントの形状やフィット感にある場合、調整を行うことで症状が改善するかもしれません。また、痛み以外にも違和感や異常を感じた際には、早めに報告すると適切な対応を受けられます。
例えば、マウスピースが歯茎に当たっている、アタッチメントが外れかけているなどの問題があれば、迅速に対処してもらえるでしょう。
歯科医師とのコミュニケーションは、治療をスムーズに進めるための鍵です。痛みや不安を我慢せず、気になることは何でも相談する姿勢が大切です。
まとめ
インビザラインは、ワイヤー矯正と比べて痛みが少ないとされていますが、人によっては治療中に一時的な痛みを感じることがあります。主な原因は歯の移動による圧力や新しいマウスピース装着時の違和感、アタッチメントや口内の傷などです。
痛みは通常数日で軽減しますが、気になるようであれば鎮痛剤を飲む、冷却するなどの対処法を行うことで、多くの場合、症状を和らげながら治療を進められます。
Shiro矯正歯科では、患者さん一人ひとりに合ったインビザライン治療を提供し、痛みや不安を最小限に抑えるサポートを行っています。
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